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2015/6/3

ゲシェフトフューラーの豆知識

被用者の過失で火災、賠償責任はあるか

この記事の要約

被用者の過失が原因で職場が火事になった場合、雇用主が保険会社と結んだ火災保険は当該被用者にも適用されるのだろうか。この問題をめぐる係争でシュレスヴィヒ・ホルシュタイン高等裁判所が3月に判決(訴訟番号:16 U 58/14 […]

被用者の過失が原因で職場が火事になった場合、雇用主が保険会社と結んだ火災保険は当該被用者にも適用されるのだろうか。この問題をめぐる係争でシュレスヴィヒ・ホルシュタイン高等裁判所が3月に判決(訴訟番号:16 U 58/14)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は過失で火事を起こした秘書を相手取って、秘書の雇用主と火災保険契約を結んでいた保険会社が起こしたもの。同秘書は毎日、午前中はオフィスビルの所有者のために、午後はオフィスビルの入居企業のために働いていた。

2010年8月25日の勤務時間前、職場のキッチンルームでコーヒーを入れて飲んだ後、退出。その後、キッチンルームから出火し、消防車が出動して鎮火した。火災で発生したコストは計2万8,890ユーロに上った。

原告保険会社は被告の過失が原因で火事になったことが確認されたことを受けて、被告に2万2,890ユーロの支払いを要求。これが拒否されたため、提訴した。

原告は1審で敗訴したの、2審のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン高裁で勝訴した。判決理由で同高裁の裁判官は、原告保険会社が被告の雇用主であるオフィスビルの所有者と結んだ契約には、被告に損賠責任が発生しないと明記はされていないが、契約内容からは同雇用主と近い関係にある者に賠償責任が発生しないことが帰結されると指摘。そのうえで、被用者である被告は同雇用主と近い関係にあるとの判断を示した。最高裁への上告は認めなかった。