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2015/6/10

経済産業情報

核燃料税はEU法に抵触せず、欧州司法裁が電力会社の訴え棄却

この記事の要約

ドイツの核燃料税は欧州連合(EU)法に違反するとしてエムスラント原子力発電所の運営会社ケルンクラフトヴェルケ・リッペ-エムスが提訴した係争で、欧州司法裁判所(ECJ)は4日、訴えを棄却する判決を下した。勝訴して税還付を勝 […]

ドイツの核燃料税は欧州連合(EU)法に違反するとしてエムスラント原子力発電所の運営会社ケルンクラフトヴェルケ・リッペ-エムスが提訴した係争で、欧州司法裁判所(ECJ)は4日、訴えを棄却する判決を下した。勝訴して税還付を勝ち取ることを狙っていた電力大手は大きな痛手を受けた格好。同税をめぐってはドイツの連邦憲法裁判所(BVerfG)が現在、違憲立法審査を進めており、BVerfGの判決が最終的なカギを握ることになる。

ドイツ政府は2010年、原発の稼働期間を平均12年間、延長することを電力会社に認める見返りとして、核燃料税を導入した。核燃料1グラムにつき145ユーロを課すというもので、11年1月から16年末まで徴収することになっている。電力会社がこれまでに納税した額はエーオンで23億ユーロ、RWEで12億ユーロ、EnBWで11億ユーロ。税収は放射性物質よる地下水汚染が起きているアッセ中間貯蔵施設の改修に充てられる。

政府は福島原発事故が起きた11年、原発の稼働期間延長を撤回した。その際、核燃料税を廃止しなかったことから、原発事業者は同税が基本法(ドイツの憲法)とEU法に違反するとして裁判を起こした。

RWEとエーオンの合弁会社であるケルンクラフトヴェルケ・リッペ-エムはハンブルク財政裁判所に提訴。同財政裁は13年、核燃料税が基本法とEU法に違反している疑いがあるとして、BVerfGとECJの判断を仰いだ。

ECJは今回の判決で、核燃料税は原発以外の発電を優遇する不当な国家助成に当たるなどとする原告の主張をすべて棄却した。判決理由で裁判官は、原発で発生する放射性廃棄物の貯蔵には巨額の費用が発生するが、他の発電ではそうしたコストが発生しないと指摘。核燃料税を原発だけに課すことは不当な国家助成に該当しないとの判断を示した。

エーオンは今回の判決について、核燃料税がEU法に抵触しないことが確定したに過ぎないと指摘。BVerfGが今後下す判決に期待感を示した。

一方、ドイツのバーバラ・ヘンドリックス連邦環境相はECJ判決を歓迎するとともに、同判決により核燃料税の徴収期間を原発が最終的に廃止される22年まで延長できる可能性が出てきたと発言。その方向で検討する考えを示唆した。