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2015/7/29

ゲシェフトフューラーの豆知識

「年金受給が可能だから解雇」は差別

この記事の要約

差別を受けた間接事実を被用者側から提示された場合、雇用主には差別がなかったことを証明する義務が発生する。これは一般平等待遇法(AGG)22条に記されたルールであり、雇用主が証明できなければ差別の事実が確定する。この決まり […]

差別を受けた間接事実を被用者側から提示された場合、雇用主には差別がなかったことを証明する義務が発生する。これは一般平等待遇法(AGG)22条に記されたルールであり、雇用主が証明できなければ差別の事実が確定する。この決まりをめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が23日に判決(訴訟番号:6 AZR 457/14)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判はクリニックに勤務する1950年1月20日生まれの医師助手が同クリニックの経営者を相手取って起こしたもの。原告は主に検査室で勤務していたが、雇用主は業務の見直しに伴い検査室の業務が大幅に減ったため、2013年5月24日付の文書で原告に、同年末付けの解雇を通告した。

原告はこの時点で63歳で、原告より若い同僚4人は引き続き勤務することになっていた。

被告は原告に解雇の理由として、すでに年金を受給できる年齢に達していることを挙げた。原告はこれがAGGで禁じられた年齢差別に当たるとして、解雇無効の確認と慰謝料の支払いを求める訴訟を起こした。

これに対し被告は、原告を解雇対象としたのは職業上の能力が他の同僚よりも低いためだと反論。年金受給可能年齢に達したことを理由として挙げたのは原告を傷つけないための配慮だと主張した。

下級審は原告敗訴を言い渡したものの、最終審のBAGは逆転勝訴判決を下した。判決理由でBAGの裁判官は、年金受給が可能な年齢に達したことが解雇の本当の理由だとする疑惑(差別の間接事実)に十分な反証を提示できなかったと言い渡した。

裁判官は原告に慰謝料請求権があるかどうか、および同請求権があるとすれば慰謝料の額はどの程度が妥当かについてはBAGで確定できないとして、裁判をザクセン州労働裁判所に差し戻した。

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