被用者に対し業務用携帯電話機をプライベートな目的で利用することを認めている企業で、被用者が有料情報電話(日本のダイヤルQ2に相当)を利用した場合、企業は当該被用者を解雇できるのだろうか。この問題をめぐる係争でデュッセルドルフ州労働裁判所が9月に判決(訴訟番号:12 Sa 630/15)を下したのでここで取り上げてみる。
裁判は小規模企業に勤務する事務職員が同社を相手取って起こしたもの。同社では業務用携帯の私的な利用を従業員に認めていた。
原告社員は2015年1月、ラジオ局が行った福引に業務用携帯を使って計37回、電話した。1回当たり50セントの参加料金が課金された。
電話料金の明細でこの事実を知った雇用主が原告に問いただしたところ、原告は事実を認め、参加料金あわせて18.50ユーロを支払うと申し出たが、雇用主はその3日後、原告に即時解雇を通告。念のために解雇予告期間付の通常解雇も通告した。
原告はこれを不当として提訴。1審のヴェーゼル労働裁判所は即時解雇は行き過ぎた処分だが、通常解雇は妥当だとの判断を示した。
2審のデュッセルドルフ州労裁も1審判決を支持。業務用携帯の私的利用を認められていたとしても有料情報電話を利用することは義務違反に当たるとの判断を示した。即時解雇については◇私的利用の許可範囲を被告企業が被用者に対し明確に示していなかった◇被告が福引電話をかけたのが休憩時間中だった――などの事情を踏まえると、行き過ぎた処分だと言い渡した。
最高裁への上告は認めなかった。