欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2015/12/2

ゲシェフトフューラーの豆知識

整理解雇一時金、障害者の不利な取り扱いは違法な差別

この記事の要約

企業が人員削減を行う場合、労使が交渉して「社会的計画(Sozialplan)」というリストラ計画を策定する。これは事業所体制法(BetrVG)112条に規定されたルールで、希望退職や解雇の対象となる従業員が被る経済的な損 […]

企業が人員削減を行う場合、労使が交渉して「社会的計画(Sozialplan)」というリストラ計画を策定する。これは事業所体制法(BetrVG)112条に規定されたルールで、希望退職や解雇の対象となる従業員が被る経済的な損失を相殺ないし緩和することを目的としている。その際に障害者を健常者よりも不利に取り扱うことは違法な差別に当たる。そんな判断を最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が11月17日に下した判決(訴訟番号:AZR 938/13)で下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は被告企業の整理解雇対象となった重度の障害者が同社を相手取って起こしたもの。同社は原告が所属する事業部門の廃止を決定し、労使の協議を経て2011年7月18日に社会的計画を策定した。整理解雇の対象となる社員に支給する一時金については(1)月給額(2)勤続年数(3)その他の要因――に基づいて額を決定することを取り決めた。

ただし、誕生日が1951年12月末以前の被用者に関しては失業手当を最大12カ月間、受給すれば早期年金の受給が可能になることから、支給額の上限を4万ユーロに設定。また、重度の障害者に対しては失業後に年金を受給できることを理由に一律1万ユーロの一時金と重度障害者法に基づく1,000ユーロの上乗せ手当を支給することにした。

原告は1950年生まれで、勤続年数も30年超と長かったが、重度の障害者だったため、整理一時金は1万ユーロ(上乗せ手当1,000ユーロを除く)にとどまった。同等の健常者は4万ユーロを受給しており、被告企業の社会的計画は差別的な取り決めを禁じた一般平等待遇法(AGG)7条2項の規定に抵触すると批判。3万ユーロの追加支給を求めて提訴した。

原告は1審と2審で勝訴。最終審のBAGも下級審判決を支持した。判決理由でBAGの裁判官は、障害というメルクマールに直接結びつく形で整理解雇一時金の額が決まる社会的計画は、重度の障害者に不利であれば違法な差別に当たるとの判断を示した。

企業情報
経済産業情報
COMPANY |
CATEGORY |
KEYWORDS |