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2016/4/27

総合 - ドイツ経済ニュース

排ガス不正善後策でVWが米当局と暫定合意、ダイムラーは内部調査へ

この記事の要約

自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)は21日、同社製ディーゼル車の排ガスを不正操作していた問題への善後策について米司法省などの当局および集団訴訟の代理人と暫定合意したと発表した。これにより同問題で発生するコストが一部 […]

自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)は21日、同社製ディーゼル車の排ガスを不正操作していた問題への善後策について米司法省などの当局および集団訴訟の代理人と暫定合意したと発表した。これにより同問題で発生するコストが一部確定するため、財務負担の不透明な部分がこれまでよりも小さくなる。一方、高級車大手の独ダイムラーは22日、自社製品の認証手続きで不正がなかったかを内部調査で調べることを明らかにした。同社の車両に対しても排ガス不正があったとして米国で集団訴訟が起きており、米司法省の要求を受けて調査を実施する。

VWグループでは「EA189」というディーゼルエンジンの搭載車に違法ソフトがインストールされていたことが米当局の発表で昨年9月に発覚した。米国ではVW、アウディ、ポルシェの計3ブランドの約58万台が該当している。

今回の暫定合意は2リットルエンジン搭載の48万台を対象としたもので、VWは◇所有者の希望に応じて買い戻すか無料の修理を行う◇所有者に賠償金を支払う――ことを取り決めた。賠償金の額は明らかにしていない。

残り10万台(3リットルエンジン搭載車)に関しては合意が成立していない。また、米国以外ではリコール(無料の回収・修理)を行うものの、買い戻しと賠償金の支払いは見合わせる方針だ。

VWは排ガス不正問題に絡んで2015年7-9月期(第3四半期)に67億ユーロの引当金を計上した。22日発表の15年12月期決算では同問題の引当金が162億ユーロとなっており、今回の合意を受けて大幅に膨らんだ格好だ。VWに対しては今回の合意とは別に米司法省などが刑事捜査を進めていることから、同社は今後も引当金の積み増しが避けられない見通し。

ダイムラーに対しては米法律事務所のハーゲンス・バーマンが同社製車両の所有者を代表して2月に集団訴訟を起こした。同社のディーゼル技術「ブルーテック」を搭載した車両が排出する窒素酸化物(NOx)の量は米国の環境基準を大幅に上回っていると批判している。

米司法省はこれを受けてダイムラーに内部調査を要求したとみられる。同社は集団訴訟の「訴えに根拠はない」として全面的に争う方針を打ち出しており、内部調査を通して‘身の潔白’を証明する考えのようだ。

司法省はダイムラーに対し調査要求の事実を公表しないよう要請したが、同社は適時開示義務に抵触する恐れがあると判断。同省の了承を得て情報公開に踏み切った。同省と建設的な対話を行うため情報公開は必要最低限に抑える意向を示している。

エンジン保護ルールに抜け穴

22モデルで利用が確認=独当局

一方、ドイツのドブリント交通相は22日、昨秋開始したディーゼル車排ガステストの結果を発表した。VWによるNOx排出操作の発覚を受けて実施したもので、日本車を含む独内外のメーカーの53モデルが対象となった。

調査報告によると、VWのEA189搭載車のような、台上試験と路上走行の違いを認識して台上試験でのみ排ガス浄化装置が適正に働くよう設定した違法ソフトの搭載車両はなかったものの、欧州連合(EU)ルールの盲点を突いて台上試験に合格するようにしていた車両が計22モデルあった。

EUではエンジンを保護するために外気温が低い場合は排ガス浄化装置が作動しないようにすることが認められている。これら22モデルでは屋内で行う台上検査の際は室温が低くないことから排ガス浄化装置が作動するものの、気温が低い時に屋外を走行すると作動せず、許容値を大幅に上回るNOxを排出。屋外走行時のNOx排出量が許容上限値を10倍以上、上回るモデルも5種類あった。

ドイツ車ではアウディ、メルセデス、オペル、ポルシェ、VWの合わせて約63万台(欧州全体)が該当しており、各社は当局の指示を受けて自主的なリコールの実施を確約した(表を参照)。

同ルールを濫用した外車についてはドイツで型式認定を受けていないため、独連邦陸運局(KBA)は型式認定を実施した欧州の当該国の当局と協議を行っている。

事態を重くみたKBAは◇外気温が低いと排ガス浄化装置を作動しないようにするソフトを搭載していないかを型式認定前にメーカーに確認する◇搭載している場合はその理由を説明させ、説明が妥当かどうかを吟味する◇説明が疑わしい場合は車載式排出ガス測定システム(PEMS)を用いて路上走行試験を行う――措置を即日付けで開始した。