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2019/10/23

総合 - ドイツ経済ニュース

プラスチック再利用の時代へ

この記事の要約

これにリサイクルされた3,000万トンを加えた3億9,000万トンが加工されている。

リサイクル比率を引き上げるためには非回収部分を減らすとともに、◇再利用しやすい材料を使用する◇リサイクル技術を向上させる――ことがカギを握る。

同再生原料は廃プラを熱化学処理で熱分解油に転換して製造したもの。

化学業界がプラスチックのリサイクルに本腰を入れ始めた。包装材などの不法投棄や投げ捨てが海洋汚染など深刻な環境破壊を引き起こし、世論の批判や当局の規制が強まっているためだ。16日に開幕した専門見本市「K2019」(デュッセルドルフ)ではプラスチックの循環型経済がメインテーマとなった。企業は再生比率の向上に向けて新技術やプロジェクトを紹介している。

独コンサルティング会社コンヴァージョ・マーケット・ストラテジーが樹脂リサイクル分野の業界団体と共同で作成したレポートによると、世界のプラスチック生産量は年3億6,000万トンに上る。これにリサイクルされた3,000万トンを加えた3億9,000万トンが加工されている。(下の図を参照)

一方、プラスチックの廃棄量は年2億5,000万トンに上る。そのうち1億7,300万トンが正規のルートで回収。その3割弱に当たる5,000万トンが再利用向けに分別されている。

投げ捨てや違法投棄など回収されないものは計7,700万トンと多い。

リサイクル比率を引き上げるためには非回収部分を減らすとともに、◇再利用しやすい材料を使用する◇リサイクル技術を向上させる――ことがカギを握る。プラスチックを正規ルートで回収しても埋め立てや焼却処分すると、環境汚染や地球温暖化などの原因となることから、プラスチックのリサイクル性能・技術を引き上げることは重要だ。

欧州連合(EU)の欧州委員会は域内の再生プラスチック使用量を2025年までに1,000万トンへと引き上げる目標を打ち出している。これは現在の使用量の20%に相当する規模という。

欧州委は9月、同目標の実現に向けて「サーキュラー・プラスティック・アライアンス(CPA)」という団体を立ち上げた。計100以上の企業や業界団体が加盟しており、ドイツからは樹脂加工産業全国連盟(GKV)のほか、ドイツ機械工業連盟(VDMA)も加盟している。機械メーカーは設備の提供という形でプラスチックの生産、再生に関与することから、VDMAは参加した。

加盟企業・団体はリサイクルに適した製品設計や廃プラの回収・分別・再生プラ化、研究・開発、監視を義務づけられる。

廃プラから熱分解油製造

こうした流れを受けて、化学メーカーはK2019に合わせて様々な発表やプレゼンテーションを行った。BASFはプラスチック廃棄物の熱分解と熱分解油の精製を専門に手がけるスウェーデン企業クアンタフューエルに2,000万ユーロを出資。ケミカルリサイクリング技術の発展を図る。

BASFは廃プラから得られる再生原料を工場で使用する「ケムサイクリング」プロジェクトを昨年から実施している。同業ヘンケルは同プロジェクトの一環として、自社の洗濯洗剤ブランド「パーウル」の包装容器に再生原料を投入した。

同再生原料は廃プラを熱化学処理で熱分解油に転換して製造したもの。機械的再生処理と異なり、再生プラの純度が高いうえ、何度でも再生できる強みがある。

ヘンケルはリサイクル技術のスートアップ企業サペラテックに出資することも明らかにした。アルミニウムやプラスチックを重ね合わせた複合材料の包装材をリサイクルする技術の産業化を支援する意向だ。ヘンケルはリサイクルに適した複合材料向け接着剤を市場投入する。

独コベストロは使用済みのポリカーボネート(PC)から電子機器向けの材料を再生するプロジェクトを他社と共同で実施する。