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2020/4/22

総合 - ドイツ経済ニュース

営業制限を部分緩和、社会的距離規制は継続 マスク着用を奨励

この記事の要約

ただ、制限措置を大幅に緩和すると感染者が再び急増し、これまでの成果が台無しになることから、差し当たっては感染リスクを比較的抑制しやすい小売店などに緩和対象を制限する。

同アプリでは利用者同士が近接した際に、近距離通信技術ブルートゥースを利用して匿名化した識別情報を交換する。

連邦と州は今回の取り決めの効果を見極めたうえで、制限措置をさらに緩和するか、あるいは新たな規制を導入するかを5月3日までに決定する。

ドイツのアンゲラ・メルケル連邦首相と国内16州の首相は15日の電話会議で、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために3月から導入している規制を一部解除することを決めた。各種の制限措置の効果で感染拡大が鈍化しているためだ。ただ、制限措置を大幅に緩和すると感染者が再び急増し、これまでの成果が台無しになることから、差し当たっては感染リスクを比較的抑制しやすい小売店などに緩和対象を制限する。メルケル首相と16州の首相は決議で、感染拡大の鈍化はエピデミックの克服を意味しないことを指摘したうえで、「これまで慣れ親しんできたエピデミック発生前の生活に戻ることはできない。エピデミックとともに長期間、生活することを学ばなければならない」と強調し、今後も注意を怠らないよう市民に促した。

ドイツでは同日まで4日連続で新規の感染者数が減少。感染者1人が何人に感染させたかを示す基本再生産数(1を上回ると新規感染者数が増加、1を下回ると減少)も0.8~1.2で推移している。重症・重篤化した患者を治療するための呼吸器付きの集中治療用ベッドには1万床、その他の集中治療用ベッドにも1万床のゆとりがある。

連邦・州政府はこうした状況を踏まえ、3月中旬に開始した制限措置の部分解除を決議。まずは週明けの20日から小売店の規制を緩和した。床面積800平方メートル以下の店舗は営業を再開できるようになった。自転車販売店と自動車販売店、書店は床面積の広さにかかわらず営業が可能だ。営業再開に当たっては衛生の確保、店舗の規模に見合った入店者数の制限、店先での行列発生の回避を義務付けられている。

床面積800平方メートル超の小売店で営業再開が認められなかったのは、大型店が業務を再開すると商業地区に消費者が多く集まり、感染拡大につながりかねないと判断したためだ。これに対しては小売業界団体から不満が出ており、衣料品販売業界団体BTEは補償金の支払いを政府に要求した。独小売業全国連盟(HDE)によると、食料品店などを除く小売店の営業が禁止された3月16日から4月12日までの4週間で失われた小売業界の売上高は約300億ユーロに上る。

理容・美容店も5月4日から営業を行うことができる見通し。店員は顧客と至近距離で仕事をすることから、小売店に課された条件に加えマスク着用なども義務付けられる。

飲食店はデリバリーとテイクアウトを除き、引き続き営業が禁じられる。ホテルも観光客を宿泊させるとこができない。サッカーやコンサートなど大型イベントの禁止措置は少なくとも8月末まで継続される。

学校は5月4日から段階的に授業を再開する。具体策は州教育相会議で取り決める予定だ。

企業にも対策を要求

企業に対しては各事業拠点に見合った感染防止策を取るよう呼びかけている。具体的には衛生措置のほか、◇従業員間および顧客との接触を可能な限り避ける◇在宅勤務ができる場合は認める――などを求めている。

連邦・州政府は、人と人の距離を1.5メートル以上に保つソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を最重要措置と位置付けており、家族を除く3人以上が公共の場でたむろすることを今後も禁止する。感染拡大の防止に向けてはこのほか、◇感染検査能力を週65万件に拡大する◇感染者と接触したことを知らせるスマホアプリを導入する――意向だ。これらの措置により感染ルートの早期特定と感染者の隔離を実現する。

同アプリでは利用者同士が近接した際に、近距離通信技術ブルートゥースを利用して匿名化した識別情報を交換する。誰がいつどこにいたかは特定されないことから、個人情報は保護される。アプリの利用は任意。利用者が少ないと効果が薄いことから、多くの市民が利用するかどうかが重要なポイントとなる。

マスクの着用を義務化するかどうかについては議論が分かれていたが、連邦と州は今回、公共の場での着用を推奨することで合意した。小売店や1.5メートル以上の距離を保つことが難しい公共交通機関では着用することを強く勧めている。これは人と人が近い距離で働く職場にも当てはまる。

連邦と州は今回の決議の効果を見極めたうえで、制限措置をさらに緩和するか、あるいは新たな規制を導入するかを5月3日までに決定する。