ドイツ連邦内務省は13日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために実施している国境検査を緩和すると発表した。国内と周辺諸国の新規感染者数が大幅に減少していることから、周辺諸国と国境を接する州からは緩和を求める圧力が強まっており、これに譲歩した格好だ。
ドイツ政府はオーストリア、スイス、フランス、ルクセンブルク、デンマークの5カ国を対象に3月16日から暫定的な出入国管理を開始した。欧州の人の自由な移動を保障するシェンゲン協定のルールを棚上げ。正当な理由がない場合は、ドイツ人およびドイツに居住する外国人がドイツに入国するケースを除いて、これらの国との国境を越えることができなくなっていた。
厳しい国境検査が導入されたことから、国境を越えて通勤する人など正当な理由のある人も毎日、大きなストレスを抱えることになり、フランス人の対独感情がやや悪化するなどの問題が発生。国境の州からは出入国検査の緩和を求める声が出ていた。
内務省は今回、こうした事情と感染者数の減少を踏まえ緩和方針を打ち出した。ルクセンブルク国境では16日から検査を廃止。デンマーク国境でも同様の措置を取る方向で同国政府と協議する。
フランス、スイス、オーストリア国境では検査を6月15日まで継続するものの、今後は全面検査から抜き取り方式の検査へと改める。ただ、ドイツに入国するには家族に会うなどの正当な理由を引き続き要求される。
ドイツおよび周辺諸国で感染者数が再び大きく増えた場合は、厳格な国境検査を再導入する。住民10万人当たりの新規感染者が7日間で計50人を超えた場合が再導入の目安になるとしている。
第三国から欧州連合(EU)域内への入域を原則禁止する措置については、欧州委員会の提案を受け入れ6月15日まで1カ月延長することにした。
国外からの入国者に2週間の隔離を義務付けるルールに関しては変更する意向で、今後は隔離対象を第三国からの入国者に限定する。ドイツでは11日、EU加盟国スウェーデンからの帰国者が、すべての入国者を例外なく隔離対象とするのは不当として起こした裁判で勝訴。内務省はこれを踏まえ、EU加盟国からの入国者には隔離を義務付けないことを州政府に勧告した。ノルトライン・ヴェストファーレンなど複数の州は同裁判と内務省の勧告を受けて、EU、シェンゲン協定加盟国および英国からの入国者を隔離義務対象から除外する政策を導入。これらの国は出張や観光で訪問しやすくなっている。
ドイツに対してはポーランドとチェコが厳格な国境検査を実施している。また、ドイツなどからの入国者に隔離を義務付けている。ドイツ政府はこれらの措置の緩和を両国に求めていく意向だ。
欧州委も移動制限緩和を提案
一方、EUの欧州委員会は13日、域内で新型コロナの新規感染者が減少したことを踏まえ、加盟国間の移動や旅行の再開に向けた指針を発表した。国や地域ごとの感染状況や医療体制などの要件に応じ、段階的に規制を緩和するよう加盟国に提案している。夏の休暇シーズンを前に条件付きで観光業の再開を認め、経済への打撃を和らげる狙いだ。第三国からEU域内への渡航に関しては、6月15日まで原則禁止する方針を打ち出している。
欧州委は移動制限の解除にあたり、国や地域ごとの感染状況に加え、移動先での医療体制や予防措置の実施状況、さらに経済とのバランスを考慮したうえで、段階的に国境を開放するよう呼びかけた。実際に制限を解除するかどうかの判断は加盟国に委ねられるが、欧州委は協調した対応を求めている。
欧州委の指針によると、感染リスクを抑えるため、旅行者は航空券などをオンラインで購入し、旅行中はマスクの着用が求められる。電車やバス、フェリーなどの交通機関に対して乗客数を制限したり、空港や駅に消毒液を設置するよう要請。乗客との接触を減らすため、機内や車内での食事や飲み物の提供も取りやめるよう促した。乗客に症状が出た場合の対応策を事前に策定することも求めている。