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2020/9/30

総合 - ドイツ経済ニュース

高レベル放射性廃棄物の保管候補地を選定、計90地域

この記事の要約

放射性廃棄物の最終保管業務を引き受けるドイツの政府機関「連邦処分会社(BGE)」は28日に発表した中間報告で、高レベル放射性廃棄物を最終保管する候補地域として計90カ所を選定したことを明らかにした。地質学的にみて最終保管 […]

放射性廃棄物の最終保管業務を引き受けるドイツの政府機関「連邦処分会社(BGE)」は28日に発表した中間報告で、高レベル放射性廃棄物を最終保管する候補地域として計90カ所を選定したことを明らかにした。地質学的にみて最終保管地として適している場所をリストアップしたもので、政府は今後、各候補地の実地調査や市民の声を踏まえ2031年に最終保管地を決定。50年から保管を開始する計画だ。

ドイツでは長年、同国北部のニーダーザクセン州ゴアレーベンにある岩塩鉱跡地が最終保管地とされてきた。だが、同跡地については地質学上、最終保管に適さないとの批判があったほか、地元住民の反対運動も根強いため、国と州は最終保管地選定の仕切り直しを決定。これを受けて16年に設立されたBGEは今回、地質学的に適した地域のリストアップを行った。

この結果、ゴアレーベンは表土と水質化学上の問題があるとして候補地から除外された。炭鉱跡が多いルール工業地帯も坑道が多く地質学的な安定性がないとして候補外となっている。

ドイツでは原子力発電が最終的に終了する22年末時点で、高レベル放射性廃棄物の累積量が2万7,000立法メートルに達する。政府はこれを1,900本の容器に入れて最終保管する計画。容器を除いたベースで単純に計算すると一辺30メートルの空間が必要となる。

低・中レベル放射性廃棄物については北ドイツのシャハト・コンラート鉱山跡地で27年から最終保管されることが決まっている。

高レベル放射性廃棄物の保管期間は100万年と極めて長い。この間に保管施設外に放射能が漏れ出ることは絶対にあってはならないことから、保管地は地質上の安定性が必要となる。

最終保管地の地質としては岩塩、粘土岩、および花崗岩などの結晶質岩が適切とされている。ただ、それぞれに一長一短がある。

結晶質岩には堅固で高温に強く溶解しにくいというメリットがあるものの、亀裂の自動修復効果がないという弱点がある。岩塩は可塑性による亀裂の自動修復効果があるものの、耐水性に問題があるほか、結晶質岩に比べて堅固性・安定性も低い。また、粘土岩は水密性が高いものの、結晶質岩に比べ堅固性・安定性が低い。

候補地となること自体を拒否する州も

BGEは今回、各地質のこうした強みと弱みを度外視して、最終保管に適した地域を、恣意性を排除して科学的にリストアップ。90地域が候補となった。90地域の総面積は24万平方キロメートル強で国土全体の54%を占めており、ドイツの半分以上の場所が地質学上は最終保管に適していることになる。国内16州のうちザールラントを除く15州に候補地がある。BGEが作成した地図を見ると、粘土岩の地質は同国北部、岩塩の地質は中部、結晶質岩の地質は南部に多い。

候補地の選定では科学性のほか、選定過程の透明性を確保することがすでに決まっている。背景には、ゴアレーベン岩塩行跡地を1970年代後半に最終保管所に決定した際は選定過程が不透明で、これが大きな反対運動を引き起こし、最終的に選定の仕切り直しにつながったという事情がある。

ゴアレーベンは地質学的な理由でなく、社会主義国家の東ドイツに国境を接する人口希薄地域だったことから選定されたとされる。同跡地が今回、候補地に入らなかったことは当時の選定が適切でなかったことをうかがわせる。選定過程の客観性確保と国民的な合意なしに最終保管地を決定できないというのはドイツがゴアレーベンから学んだ教訓だ。

BGEがリストアップした90地域のなかから最終的にどの地域が最終保管所に選定されるかは現時点で全く決まっていない。ゴアレーベンの地元、ニーダーザクセン州のシュテファン・ヴァイル州首相は、最終保管地に適さないゴアレーベンが候補地から除外されたことを高く評価したうえで、州内の別の地域が仮に最終保管地に選定された場合は受け入れる意向を表明した。

一方、同国南部のバイエルン州政府は自州内に最終保管の適地はないとして、BGEの選定リストに疑問を投げかけた。同州が候補地となること自体を拒否している。

放射性廃棄物が自らの居住地域で保管されることを望む人は誰もいない。このため、候補地が今後、絞り込まれていくと各地で反対運動が起こると予想される。計画通り31年に保管地を決定できるかどうかが注目される。