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2020/11/4

総合 - ドイツ経済ニュース

ロックダウン再導入、感染経路不明のケースが75%超に

この記事の要約

ドイツのアンゲラ・メルケル連邦首相と国内16州の首相は10月28日、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた措置の強化を取り決めた。新規感染者数が国内の約4分の3の地域で「危険水準」に達するなど厳しい状況にあることから、 […]

ドイツのアンゲラ・メルケル連邦首相と国内16州の首相は10月28日、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた措置の強化を取り決めた。新規感染者数が国内の約4分の3の地域で「危険水準」に達するなど厳しい状況にあることから、3月から4月にかけて実施した全国的なロックダウン(都市封鎖)を再導入する。メルケル首相は会議後の記者会見で、医療が全国的に危機的な状況へと陥ることを避けるために「我々は行動しなければならない。それも今すぐにだ」と述べ、緊急性をアピールした。

同国では新規感染者数が1週間で倍増する感染爆発が続いている。28日には1万4,964人に達し過去最高を更新。29日には1万6,774人、31日には1万9,059人へと大幅に拡大した。集中治療ベッドで治療を受ける人の数が2倍に増えるスピードも10日と速い。

ドイツでは人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数が計50人を超えた地域を「危険地域」に指定し、感染防止策の強化を義務付けている。ロベルト・コッホ研究所(RKI)の28日の報告によると、国内404地域のうち298地域で50人を突破。そのうち132地域は100人を超えた。200人超も12地域ある。

同50人を超えると感染経路の追跡が難しくなる。このため現在は感染経路を追跡しきれないケースが極めて多く、いつどこで感染したかを特定できない新規感染者の割合は75%を超える。

ドイツはこれまで、規制強化を新規感染者数の多い地域に限定する方針を取ってきたが、国内の大半の地域が50人超の危険地域となったことから、全国規模のロックダウン再導入を決めた。全国一律の規制に反対してきた一部も州も今回は理解を示し、支持に回った。

前年売上の75%を補償

ロックダウンは週明けの11月2日に開始された。30日までの約1カ月間、実施される。人と人の接触を必要最低限の抑え、感染拡大の起点を大幅に減らす考えだ。これにより人口10万人当たりの新規感染者数を50人以下に引き下げ、追跡調査を完遂できる状況を取り戻す。11月中に新規感染者数を大幅に減らし、高齢者を含む家族がクリスマスをともに過ごせるようにすることも意図している。

ロックダウンの期間中は公共の場に3家族以上が集まることが禁止される。2家族以内でも許容上限は10人となる。これにより市民の感染リスクが低下するうえ、感染者が接触した人の範囲も狭まることから、保健当局は感染経路を追跡しやすくなる。

ホテルは観光客の受け入れを禁止される。国(連邦)と州の合意文書では、日帰りであっても居住する地域の外部に不要不急の旅行をしないよう呼びかけている。

劇場、歌劇場、コンサートホール、見本市、映画館、遊園地、カジノ、ゲームセンター、サウナ、浴場、プール、フィットネスクラブなどは閉鎖される。また、プロスポーツの試合は無観客で行われる。アマチュアスポーツは個人、2人、ないし家族で行うものを除き公共・私的な施設を利用できない。

飲食店は店舗での営業が禁止となる。テイクアウトと出前サービスは認められる。また、社員食堂は営業を続けることができる。

コスメティック、マッサージ、タトゥーサロンなどボディケアサービスは禁止される。理容・美容店は引き続き営業できる。

小売店・卸売店も営業を行うことができる。前回のロックダウンと異なり、スーパーや食料品店、薬局など当座の生活の維持に最低限必要な商品を取り扱う店舗以外でも営業が認められている。ただ、店舗10平方メートル当たりの客数を1人以下に抑制しなければならない。

学校や保育施設は閉鎖しない。各州政府が感染防止策を定めて授業などを実施する。

営業禁止の対象となった企業に対しては保障措置を取る方針で、従業員数50人以下の企業には前年同月の売り上げの75%相当額を支給する。補償額は計100億ユーロに達する見通しだ。業務を行う企業に対しては在宅・モバイル勤務を可能な限り活用し、感染防止に努めるよう要請している。

メルケル首相と州首相は2週間後に再び協議し、ロックダウンの効果を検証。必要に応じて修正を加える。