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2021/12/15

総合 - ドイツ経済ニュース

感染防止改正法案が成立、薬剤師などにワクチン接種資格

この記事の要約

ドイツ連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)は10日、感染防止改正法案を可決した。新型コロナウイルスの感染が極めて高い水準に達し、集中治療がひっ迫していることに対処することが狙い。改正法は12日付で施行されており、州はこれ […]

ドイツ連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)は10日、感染防止改正法案を可決した。新型コロナウイルスの感染が極めて高い水準に達し、集中治療がひっ迫していることに対処することが狙い。改正法は12日付で施行されており、州はこれまでよりも制限度の高い規制を実施できるようになった。また、薬剤師などへのワクチン接種資格付与や、医療や介護関係者の新型コロナワクチン接種義務化が決まった。

高齢者や病人は免疫力が弱いため、老人ホームや病院では新型コロナの集団感染がこれまで数多く、発生してきた。医療・介護関係者などがワクチンの接種を受ければ、そうしたケースを大幅に削減し、重症化したり死亡する人を減らせることから、改正法では病院、介護施設・サービス、障害者施設、レスキュー隊、産院で働く人に接種を義務付けている。該当する就労者は接種証明ないし感染からの快復証明を雇用主に提示しなければならない。期限は来年3月15日。健康上の理由で接種を受けられない人はその旨を記した医師の証明書を提示することになる。違反者には罰金が科される。

政府はこれとは別に、新型コロナワクチンの接種を原則的にすべての国内在住者に義務付ける方針。現在は法制化の準備を進めている。

ドイツでは現在、ブースター接種希望者の急増と職場での3Gルール義務化を背景に、接種需要に供給が追い付かない状況となっている。これを解消するため改正法には薬剤師と歯科医、獣医にワクチン接種資格を臨時付与することが盛り込まれた。

国内の新規感染者数はこのところやや減少しているものの、水準自体は依然として極めて高く、集中治療のキャパシティは限界に近い状況だ。このため州サイドは、11月下旬に施行された旧感染防止法(旧法)で認められているよりも踏み込んだ制限措置を実施できるようにすることを要求。政府・与党はこの要求を改正法案にある程度、取り入れた。

旧法に基づいて全国で行われていた規制では、市民が私的・公的な場所で他人と会う際に非接種者がいる場合は、一家族に他の家族の2人を加えた人数が許容上限となっていた(14歳未満は同規制の対象外)。会合参加者が接種完了者・快復者に限られる場合は人数制限が課されていなかった。改正法の施行後は、州は接種完了者・快復者だけの会合でも人数制限を導入できるようになった。また、飲食店、クラブ、ディスコの営業と見本市、会議の開催を一時的に禁止できるようになった。

同国では旧法が施行された11月25日からロックダウンが実施できなくなったが、それまでに導入されたロックダウンは例外的に12月15日まで有効とされてきた。感染者数が特に多いバイエルン、ザクセンの2州はこのルールに基づいてロックダウンを現在も実施している。改正法にはその期限を3月19日まで延長することが盛り込まれたことから、両州は現在の厳しい制限措置を最長で来春まで継続できるようになった。

オミクロン株は市中感染が主流に

新規感染者数は緩やかに減少している。ロベルト・コッホ研究所(RKI)によると、人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数は13日に389.2人となり、過去最高を記録した11月29日(484.9人)から約20%減少した。感染の急拡大を受け当局が規制を強化したほか、市民が行動に慎重になったことが背景にある。ワクチン接種完了率も69.6%(人口比)となり、前月同日から2.0ポイント上昇。ブースター接種を受けた人は23.8%に達した。

ただ、集中治療を受ける患者は4,905人と多く、新型コロナ感染者の集中治療病床使用率はここ数日22%台で推移している。1カ月前の11月13日は13.4%、2カ月前の10月13日は6.3%であり、現在の水準は極めて高い。集中治療室の滞在日数は通常、長期に渡ることから、新規感染者が減っても集中治療患者数は高水準が続いている。

RKIの9日付週報によると、オミクロン株の感染者数は7日までに計28人に上った。このほか同株に感染した疑いが濃厚な人が36人おり、合計は64人となっている。このうち48人は11月29日~12月5日の週(2021年第48週)に感染が確認されており、同株の拡大が加速していることがうかがわれる。

オミクロン株の国内感染者は全員、症状が軽いか無症状で、入院したり死亡した人はこれまでのところいない。ワクチン接種完了者は34人で、そのうち5人はブースター接種を受けていた。国外で感染した人は23人であることから、市中感染者はこれを上回っている計算だ。感染者総数は英国(13日時点の累計感染者数4,713人)に比べ少ないものの、同株感染者が大幅に増えるのは時間の問題で、1月にはデルタ株を抜いて主流になると目されている。

感染者数はフランクフルトやミュンヘンなど国際空港を抱える地域で多いという。第48週の同株感染者数(48人)を州別でみると、最も多いのはノルトライン・ヴェストファーレンで11人に上った。これにバーデン・ヴュルテンベルクが10人、ヘッセンが9人、バイエルンが6人、ベルリンが3人、ニーダーザクセンが2人、ブランデンブルク、ブレーメン、ハンブルクが各1人で続く。その他の州では確認されていない。