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2022/4/27

総合 - ドイツ経済ニュース

エネ高騰負担軽減策を有力経研が批判、インフレ率は戦後最大に達する可能性も

この記事の要約

Ifoなど有力な経済研究所は13日、『春季共同予測(GD)』を発表した。ロシアのウクライナ侵攻を受けてドイツ政府が打ち出した経済支援策を財政、技術革新などの観点から批判。ハレ経済研究所(IWH)のオリファー・ホルテメラー […]

Ifoなど有力な経済研究所は13日、『春季共同予測(GD)』を発表した。ロシアのウクライナ侵攻を受けてドイツ政府が打ち出した経済支援策を財政、技術革新などの観点から批判。ハレ経済研究所(IWH)のオリファー・ホルテメラー副所長は、高いエネルギー需要を支える政策は反生産的だと言い切った。

政府はウクライナ戦争と対露制裁のしわ寄せを受ける市民、企業への支援策を相次いで打ち出した。具体的には就労者へのエネルギー一時金300ユーロ支給、自動車燃料税の軽減、子持ち世帯への一時金支給、近距離公共交通機関の1カ月定期券を3カ月間に限り9ユーロで提供、資金繰りが悪化した企業への低利融資支援、エネルギー集約型企業への補助金交付などを行う意向だ。

これらの措置に絡んでキール世界経済研究所(IfW)のシュテファン・コーツ副所長は、市民の多くは物価高騰に対応できるだけの購買力を持っており、支援対象は低所得層に制限すべきだと強調。企業支援策についても、補助金交付競争を回避するため、可能な限り欧州連合(EU)レベルで調整を行うべきだと提言した。

RWIライプニッツ経済研究所(旧ライン・ヴェストファーレン経済研究所)のクリストフ・シュミット所長は「1970年代の石油危機はイノベーションをもたらした」と指摘したうえで、気候中立目標を実現するためにドイツが現在必要とするのは当時と同様、技術の進歩を加速させることだとして、化石燃料の使用を底支えする政策は好ましくないとの認識を示した。

今年の実質国内総生産(GDP)成長率についてはウクライナ戦争の勃発を踏まえ従来予測(昨年10月)の4.8%から2.7%へと2ポイント以上、下方修正した。政府の経済諮問委員会(通称:5賢人委員会)が3月末に発表した同1.8%に比べると水準が高い。両者の予測値が大きく隔たっている背景には先行きを読みにくいという事情がある。そうした状況下では各種機関が算出する予測に大幅なズレが生じやすい。春季GDもロシアからのエネルギー供給が停止した場合は成長率が1.9%に下振れすると予想。来年はマイナス2.2%となり、不況に陥るとしている。

今年のGDPを強く押し下げるのは設備投資で、春季GDは同成長率が昨年の3.4%から1.0%に縮小すると予測している。先行き不透明感の強まりを受け企業が新規投資を控えることを勘案。輸出成長率も9.9%から4.9%に低下するとみている。

エネルギーをはじめ幅広い分野で価格が高騰していることから、インフレ率は6.1%となり、40年来の高水準に上ると予想する。ロシア産エネルギーの供給が止まった場合は第2次世界大戦後最高の7.3%に達する見通しだ。

個人消費は4.7%増と大幅拡大を予想している。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための措置がほぼ全面的に解除されたためだ。過去2年間の規制で貯蓄が膨らんでいることもあり、消費者の財布のひもは緩む見通し。