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2022/12/14

総合 - ドイツ経済ニュース

22~23年冬はガス不足回避見通し、消費量増加を受け当局が節約を喚起

この記事の要約

ドイツがこの冬に天然ガス不足へと陥るリスクは大幅に低下している。11月末までの消費量が低水準で推移したためだ。ただ、このところ気温が大幅に低下し、暖房用需要が大きく増えているうえ、2022~23年冬が厳しい寒冬となる可能 […]

ドイツがこの冬に天然ガス不足へと陥るリスクは大幅に低下している。11月末までの消費量が低水準で推移したためだ。ただ、このところ気温が大幅に低下し、暖房用需要が大きく増えているうえ、2022~23年冬が厳しい寒冬となる可能性を完全には排除できないこともあり、監督官庁の連邦ネットワーク庁は警戒を緩めていない。また、23~24年冬季はガス不足リスクが高まると予想されることから、市民と企業は先を見越した対応を求められている。

天然ガスと水素の貯蔵事業者が加盟するドイツの業界団体エネルギー貯蔵イニシアチブ(INES)は9日に発表した天然ガス供給に関する最新予測で、気温が極端に低くならない限り22~23年冬季にガス不足が発生することはないとの見方を示した。

INESは11月末までのデータをもとに3つのシナリオを提示した。10月末までのデータに基づき11月18日に発表した前回予測でもガス不足リスクは低いとしていたが、今回は「一段と低下した」と結論付けている。

INESが作成したシナリオは欧州連合(EU)の22年~23年冬の気温が(1)平年並みだった16年と同じ水準になる(2)暖冬だった20年と同水準となる(3)寒冬だった10年と同水準となる――というもの。11月末までのガス消費量が少なく12月1日時点の備蓄率が98%と高いことから、(1)のシナリオでは来年2月1日時点の備蓄率が69%となり、法律で定められた40%の最低義務水準を大幅に上回る。その後は4月1日に53%まで下がるものの、再び増加。9月1日には99%に達し11月1日時点の義務水準(95%)を大幅に前倒しで達成する見通しだ。同10月1日と11月1日については100%を予想している。

一方、(3)のシナリオでは備蓄率が今後、急速に下がり、2月1日時点で約15%まで低下。3月1日には底を突き、同月は1テラワット時(TWh)の不足が発生する。そのしわ寄せで来年春以降の備蓄の再拡大が遅れることから、23年11月1日時点で90%未満にとどまり、95%を確保するとした法律の定めを達成できない。

中国需要回復はリスク要因

INESは(3)のシナリオを「ほぼあり得ない」としている。だが、連邦ネットワーク庁のミュラー長官は12日、ガスの節約が足りないとして市民などに消費抑制を促した。

ドイツの天然ガス消費量は22年第48週(11月28日~12月4日)に前週比で14%増えた。平均気温が過去4年間の平均を0.7%下回った影響で暖房利用が拡大したためだ。使用量自体は過去4年間の平均を13%下回っているものの、22~23年冬季は同平均を20%下回る水準に抑制する必要があることから、同庁は最新の消費データに基づく注意を適宜、促すことで需要を適正水準に保つ考え。

天気予報によると、現在の寒波は今週末で終わり、来週(第51週)には気温が上昇する見通しだ。ただ、気温が再び大きく下がる可能性は充分にあることから、警戒を怠ることはできない。

ネットワーク庁は、冬季のガス不足を回避するためには◇消費量を最低でも20%減らす◇ドイツ北部に設置されるLNG(液化天然ガス)輸入ターミナルが計画通り年初から稼働する◇季節要因によるガスの輸入減少と輸出増加が緩やかに推移する――の3条件が満たされなければならないとしている。

一方、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は12日、EUのフォンデアライエン欧州委員長とベルギーのブリュッセルで共同記者会見を開き、23~24年冬季にはEU全体で天然ガスが300億立方メートル不足する恐れがあると警鐘を鳴らした。22~23年冬季と異なり、備蓄拡大にロシア産をまったく投入できないうえ、ゼロコロナ規制の影響で減少していた中国のLNG需要が再び拡大すると予想されるためだ。調達先の多様化や域内の消費抑制が不十分であれば不足は2倍の600億立法メートルに膨らむとしている。