ドイツは二酸化炭素(CO2)の排出量が多いものの、排出1トン当たりの国内総生産(GDP)は主要排出国のなかで最も高い。このため、生産コストの高さなどを理由にドイツから新興国への製造拠点の移転が進めば、世界全体で排出される温室効果ガスの量は増える懸念がある。デュッセルドルフにある金属雇用者団体系の応用労働科学研究所(ifaa)の調査をもとに1月27日付『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が報じた。
CO2排出情報サイト「グローバル・カーボン・アトラス」によると、2021年の世界の排出量は371億2,400万トンに達した。排出量が最も多いのは中国で114億7,200万トン。これに米国が50億700万トン、インドが27億1,000万トン、ロシアが17億5,600万トン、日本が10億6,700万トンで続く。ドイツは6億7,500万トンで7番目に多い。
排出シェアは中国が30.9%でダントツで高く、米国は13.5%、日本は2.9%、ドイツは1.8%となっている。
Ifaaはこのデータを各国のGDPと関連付け、CO2排出1トン当たりのGDPを計算した。それによると、排出上位10カ国のなかで、額が最も高いのはドイツで5,100ドルに上った。2位は日本で4,200ドル、3位は米国で4,000ドルとなっている。4位の韓国は2,500ドルで、上位3カ国との差が大きい。中国は1,500ドルで6位、ロシアは1,100ドルで9位となっている。額は先進国で高く、新興国で低い。
調査担当者はこれを踏まえ、厳しい規制と割高なエネルギーコストを理由にメーカーがドイツの工場を新興国に移転すれば、ドイツのCO2排出総量は減少するが、移転先国の排出量が加速するため温暖化防止に寄与しないと指摘。また、省資源技術の開発と実用化に向けた試みが先進国で停滞することになると警鐘を鳴らした。
主要排出10カ国のCO2排出1トン当たりのGDPが仮にすべてドイツの水準に高まると、これらの国の総排出量は23.5ギガトンから10.5ギガトンへと55%減少する。全世界でも減少幅は40%と大きい。
ただ、これはあくまで理論上の計算であり、現実的でない。CO2排出1トン当たりのGDPは各国の既存の経済構造に大きく左右されるためだ。新興国での急速な改善は見込めない。
調査担当者はこの事情も踏まえ、ドイツなどの先進国に工場をとどめ、炭素リーケージを防ぐことの重要性を強調した。
その一方で、ドイツにもCO2排出削減に向けて改善の余地があることを指摘した。隣国フランスは似たような経済構造を持っているにもかかわらず、ドイツに比べ住民1人当たりの排出量が大幅に少ないためだ。原子力発電を積極的に活用していることがフランスの強みだとしている。