ロシア政府が医療関連支出を大幅に拡大する。プーチン首相はこのほど、医療機関の近代化に向け、今年と来年で総額2兆6,000億ルーブル(641億ユーロ弱)の予算を組んでいる事実を明らかにした。これは、従来の2倍に当たる。同時に、医療機器・医療品の国産化を推進する方針で、外国メーカーに現地生産化を促す施策を予定している。
\予算増加分の大半は健康保険料の引き上げでまかなう方針だ。雇用者の保険料負担は今年1月1日から税込み給与の5.1%へと2ポイント上昇した。これにより、今後2年で保険料収入は4,600億ルーブル増加する見通し。
\ロシア政府によると、国内の医療機関では近代化が火急の課題となっている。給水設備が一本化されていない病院は9.1%、給湯設備のない病院は33.3%に達しており、40%の病院は施設全体の抜本的な改修・再装備が避けられない状況だ。
\地方自治体でも保健医療部門の近代化プロジェクトを計画しているところがある。ウラル連邦管区のスヴェルドロフスク州では、来年までに病院の医療設備刷新に3億5,000万米ドルを投じる方針だ。循環器、外傷外科、新生児科に重点が置かれている。また、モスクワのソビャニン市長は今年、市立病院の改修工事に10億ドルを支出する方針を示している。建物の老朽化が激しく、大規模な改修が必要な病院は全体の3分の1に上るという。
\ロシア政府は医療業界への投資を医療機器産業の振興につなげたい意向で、中期的に国産比率を現在の22%から50%以上に拡大させる方針だ。これに向けては、◇投資家や外国メーカーに医療機関への長期納入契約を提示◇入札では国内メーカーに優先して発注◇国内で生産されている製品については輸入関税を課す◇現地生産に必要な部品・付属品については輸入関税を免除――などの措置を計画している。政府は、現地生産化とライセンス生産による国内生産高が2020年までに最大40億ドルに達すると見込む。2009年に5億ドル、2010年に6億ドル(推定)だったことを踏まえると、その意気込みの強さがうかがわれる。
\ドイツ企業によると、ロシアで最先端機器を使いこなせる専門家が不足していることが現地生産化の障害の一つとなっている。このため、研修やシンポジウム、専門家会議などを通じて、知識の浸透を図っているという。
\産業貿易省は、医療機器市場の規模が2020年までに現在の4倍に当たる1億3,000万ドルへ成長すると見込む。特に核医学、治療機器、臨床検査、神経外科、心臓血管外科で設備予算の大幅増が予定されている。まだ、がん検診・治療については独自のプロジェクトが策定され、2016年までで総額12億ドルの特別予算が組まれた。なお、遠隔医療も重点項目の一つとなっており、2020年までに市場規模が1億3,000万ドルに達する見通しだ。
\