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2025/3/17

ドイツ経済ニュース速報

コスト高で産業空洞化、エネ価格低減策などを次期政権に要請

エネルギーなどのコスト高が独メーカーの国内投資縮小と国外移管につながっている ことが、独商工会議所連合会(DIHK)のアンケート調査で分かった。フォルカー・ト ライヤー貿易部長は「ますます多くの企業が生産と雇用の国外移管を余儀なくされて いる。これはわが国の経済政策に対する警砲だ」と述べ、近く成立見通しの新政権に エネルギー価格や税負担の軽減策を実施するよう強く要請した。 調査は国外事業を展開する独メーカーおよそ1,700社を対象に今年初、行われた。そ れによると、国外投資の「拡大」を計画するとの回答は33%となり、前年を3ポイン ト上回った。「縮小」も1ポイント増の24%に伸びたものの、拡大と縮小の差(DI) は前年の7ポイントから9ポイントに拡大した。 国外投資の最大の理由を尋ねたところ、「コスト」との回答は35%となり、金融・経 済危機のさなかにあった2008年以来の高水準を記録した。「販売・顧客サービス」と 並んでトップとなった。 コストとの回答は中間財メーカーで40%を記録。エネルギー集約型産業では47%に達 した。ドイツの4大産業では自動車が43%で最も高く、これに化学が39%、電機が 36%、機械が26%で続いた。 国外の投資先地域(複数回答可)に関してはユーロ圏が最も多く、64%に上った。北 米は前年を3ポイント上回る48%で2位に付けた。エネルギーコスト安や市場チャンス のほか、米トランプ政権の発足で関税など通商リスクが高まっていることが背景にあ る。中国は3位を保ったものの、前年を2ポイント下回る31%に低下。中国以外のアジ ア・太平洋は12ポイント減の21%と大幅に下がった。DIHKはインドやインドネシアな ど急成長するアジア諸国と自由貿易協定(FTA)を締結することが重要な課題だと指 摘した。 国外の投資先地域を業界別でみると、ほとんどの業界で1位がユーロ圏、2位が北米、 3位が中国となるなか、化学では中南米(35%)が中国(27%)を抑えて3位に付け た。エネルギー集約型産業でも中南米は28%に上り、中国と3位を分け合った。 国内投資に関しては、「増やす」との回答から「減らす」を引いた数がマイナス17ポ イントとなり、前年のマイナス11ポイントから悪化した。直近のピークである22年は プラス23ポイントに上っていた。23年はこれがプラス3ポイントに低下しており、国 内投資環境の急速な悪化がうかがわれる。ロシアのウクライナ侵略に伴う22年のエネ ルギー価格急騰とその後の高止まりが反映されているもようだ。「コスト削減を目的 とする国外投資」が国内投資縮小の最大の理由となっている。これは国内雇用の縮小 にも当てはまる。