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2025/8/22

ドイツ経済ニュース速報

蘭送電大手テネットの独子会社、ノルウェー国営ファンドなどが出資も

オランダ国有送電網運営会社テネットの独子会社テネットTSOに出資する方向で、 ノルウェー国営ファンドと蘭年金基金APGのコンソーシアムが準備を進めているも ようだ。事情に通じた3人の情報として独『ハンデルスブラット(HB)』紙が報じ たもので、9月半ばまでに拘束力のある提案を行うという。同国営ファンドとAPGは 報道内容へのコメントを控えている。 テネットは独エネルギー大手エーオンの送電網を2010年に買収し、子会社化した。 TSOが持つ送電網は北海からオーストリア国境まで国土を縦断。国内送電4社のなか でカバーエリアが最も広い。 欧州では脱炭素化に向け、化石燃料の使用を縮小・廃止し、再生可能エネルギー電 力を増やす動きが加速している。電力需要の大幅拡大に対応するため、各社は送電 網の拡充に取り組まなければならない。 そのコストは巨額であることから、蘭政府とテネットはTSOをドイツに売却する方 向で独政策金融機関KfWと交渉したものの、ドイツ側が当てにしていた買収の財源 が違憲判決で使用できなくなったことから、24年に決裂。テネットは他の投資家へ の売却ないし新規株式公開(IPO)を検討している。広報担当者は今回HB紙に、売 却かIPOかの決定を9月に下す見通しを明らかにした。 同紙によると、ノルウェー国営ファンドとAPGのコンソーシアムは第3者割当増資の 引き受けを通したTSOへの資本参加をテネットに提案するもよう。過半数株を取得 するかどうかは現時点で不明という。コンソーシアムにはシンガポール政府投資公 社GICが加わる可能性もあるようだ。 TSOに関心を示す投資家は他にもあるものの、拘束力のある提案を行うのは同コン ソーシアムだけとみられている。ドイツでは送電網会社の使用資本利益率(ROCE) が監督官庁の連邦ネットワーク庁によって制限され、高い利益率を確保できないこ とから、収益力を重視する民間投資会社の条件を満たしていない。独資産運用大手 DWSでインフラ投資ファンドを運用するペーター・ブローデーザー氏は「送電網は 年10〜15%の利益率を前提とするファンドの視野に入らない」と明言した。独送電 網会社の利益率は5〜7%にとどまるという。 国営ファンドや年金基金は長期の安定的なリターンを重視することから、ドイツの 送電網は投資対象となり得る。