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2021/11/3

ドイツ経済ニュース速報

アドブルー不足が深刻に、物流・公共交通機関に影響の恐れ

ディーゼル車の排ガス浄化に欠かせないアドブルー(尿素水)が不足している。アドブルーがなければディーゼル車は法律上、走行できないことから、事態が一段と悪化すると物流やバスの運行に支障が出る恐れがある。 独物流業界団体BGLによると、アドブルーの価格は現在1リットル当たり約70セントで、昨年初頭(19セント)のおよそ3.7倍に上る。供給量が減っているためで、運送会社は在庫の確保に奔走している。 一部の卸売事業者は買いだめを懸念し、販売量制限を開始。新規顧客の受け入れを拒否したり、受注をキャンセルするケースもある。BGLのディルク・エンゲルハルト会長は『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙に、「トラックが動けなく事態にはまだなっていないが、状況は極めて緊迫している。改善の兆しはない」と述べた。GDLは独乗り合いバス事業者全国連盟(BDO)との共同で独経済省に文書を送付し、「サプライヤーから(アドブルーの)供給を停止されたことを伝える運送会社と乗り合いバス会社が増えている」と指摘。早急な対策を要請した。 アドブルー不足の背景には天然ガス価格の高騰がある。ガス価格が年初からこれまでに3倍以上に膨らんだことを受けて、BASFやSKWシュティックシュトッフヴェルケ・ピーステリッツなどの化学メーカーはアドブルーの原料であるアンモニアの生産を縮小した。独化学工業界(VCI)のチーフエコノミストはFAZ紙に、暖房用ガス需要が旺盛な冬季が終わるまでは厳しい状況が続くとして、アドブルーの供給不足解消は早くても来年4月になるとの見方を示した。 アドブルー不足の影響はディーゼル乗用車を利用する市民にも波及する見通しだ。すでにガソリンスタンドでは品薄になっている。